#Hotel 13 妄想デート

昨年末、京都で写真展を開催した際に、ふらりとギャラリーを訪れた女性がいた。

作品をひととおり見終わると、彼女はまっすぐにこちらを見据えるとおもむろに「私を撮ってもらえませんか」と言った。

2月、大阪。

雪こそ降ってはいないが、どんよりとした鈍い曇り空と冷たい北風が一層寒さを募らせていた。

仕事の都合で関西に出向く用事があった私は、ふと思いたって彼女に連絡を取ってみた。

写真展のときの彼女のまっすぐな仄暗い瞳を思い出したからだった。

彼女は快く撮影に応じてくれた。

京橋の駅で待ち合わせた私たちは、昼からにぎわう飲み屋街の一角を目指した。

「ホテル富貴」いずれ時代の波間に消えて行ってしまうであろう、古い時代の面影を残すホテルだ。

ホテルの中は暖かく、開放的な浴室を取り囲むような珍しい造りに気分が高まる。

しばらく二人で部屋の中を探検し、気がすんで少し落ち着くと、今度は彼女の話を聞くことにした。

衣服を一枚一枚はぎ取るように、紡ぎだされる言葉の中に彼女自身を探す。

裸になり、皮膚が露わになると、今度は指で肌をなぞるように彼女の輪郭を探る。

彼女がどのような人生を送り、なぜ今こうしてラブホテルの一室で裸を晒しているのか。

その過程に興味をかきたてられるのだ。

思うに、女は男とは全く種類の違う欲求を内に秘めている。

女として認められること、女として存在を許されること。

その欲求が彼女たちを裸にする。それは男の前であってもレンズの前であっても同じなのだろう。

彼女たちは、認められたいのだ。価値ある存在として。

しかしながら、女というものは、生きていることそれ自体が作品であると常々思う。

底知れぬ欲望を内包しながら軽やかに他者と関わっていく中で、柔らかな自分自身の核を形成していく。

その過程こそが見ていて飽きることのないオリジナルの作品なのだ。

作品になりたいんですと彼女たちは言う。

けれど彼女が今生きている、そのことこそが作品であり、表現なのだ。

そんなことを考えながら、私は今日も、そっとシャッターを押す。

 

 

Hotelデータ

ホテル富貴 #406 

 大阪府大阪市都島区 3丁目7−11

75 2980

 

 

【フォトグラファープロフィール】

 Photographer

アンダーグラウンドシーンと女性のエロを得意とするフォトグラファー。

雑誌やウェブを中心に活動中。

日本初のフェティッシュ雑誌『INFAMOUS MAGAZINE』のオフィシャルカメラマンを務めるほか、様々なカルチャーシーンを撮影。

それらをまとめたフォトガイド「アンダーグラウンドイベント東京」を芸術新聞社より出版。全国書店にて好評発売中。

「写真・ソーシャル・イベント」をキーワードに、さまざまなイベントや企業とコラボし撮影会や交流会などを企画、運営するPhoto’s Gateの代表でもある。

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